ラーメンやカレー、パスタなどで注目を集める「間借り飲食店」。低コストで始めやすい営業スタイルとして広がる一方、自宅での仕込み風景がテレビで放映され、「食品衛生法違反では?」と炎上したケースも話題になりました。この記事では、間借り飲食店とは何か、自宅仕込みが問題になる理由、営業時に注意したいポイントを初心者向けにわかりやすく解説します。
そもそも「間借り飲食店」とは?
間借り飲食店とは、既存の飲食店の休業日や営業時間外などを使って、別の人がその場所で営業するスタイルのことです。自分で店舗を借りて一から内装工事をするよりハードルが低く、料理人志望の人や副業で飲食に挑戦したい人に広がっています。ニュースでも、こうした営業形態が“話題”になっている一方で、食品衛生法の規制を受ける点に注意が必要だと紹介されていますね。
ここで大事なのは、「間借りだから特別にゆるい」わけではないということ。食品衛生法上の「営業」は、食品の製造、加工、調理、貯蔵、運搬、販売などを業として行うことを含みます。つまり、料理を作ってお客さんに出す行為は、間借りでも通常の店舗営業でも同じく「営業」にあたります。
なぜ「自宅での仕込み」が炎上したのか
炎上の理由はシンプルです。仕込みも営業の一部だからです。弁護士JPニュースでは、飲食業法務に詳しい弁護士が「食品の加工・調理は営業の一部であり、飲食店なら営業許可が必要」「仕込み作業である以上、営業許可を受けた場所で行わなければならない」と説明しています。たとえば、間借り先でラーメンやピザを提供する場合、麺や生地を作る工程も“調理・加工”にあたり、自宅でやるならその自宅自体が許可を受けた施設である必要がある、という整理です。 (弁護士JP|法律事務所や弁護士の相談予約・検索)
厚生労働省の資料でも、飲食店営業は「食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業」とされ、飲食店営業の対象となる「調理」とは、食べられる状態に近い食品に手を加えて、飲食に最も適するよう加工成形することだと説明されています。さらに、麺を製造してその場で調理・提供する施設は、飲食店営業の許可が必要と明記されています。つまり、単なる盛り付けだけではなく、下ごしらえや生地づくり、麺づくりも軽く見てよい工程ではありません。 (厚生労働省)
食品衛生法のポイントは「どこでやったか」
食品衛生法第55条では、対象となる営業を行う人は都道府県知事の許可を受けなければならないとされています。また、飲食店営業は食品衛生法施行令で許可対象の営業として定められています。要するに、料理を出す商売をするなら、許可を受けた施設で、基準を満たして営業しなければならないということ。
この考え方からすると、「店では最終仕上げだけして、下ごしらえは自宅で」というやり方は、かなり危うくなりますね。家庭のキッチンは、日常生活の場であると同時に、私物や家庭用器具、生活動線が入り混じる場所です。営業用施設のように、手洗い設備、洗浄設備、保管、排水、衛生管理の基準を満たしているとは限りません。大阪市の営業許可案内でも、許可申請には施設の図面や食品衛生責任者の資格書類が必要で、監視員による施設調査を経て許可証が交付される流れになっています。つまり、「料理が上手だからOK」ではなく、「施設として衛生基準を満たしているか」が問われるのです。
では、どこまでがOKで、どこからが危ないのか
ここで迷いやすいのが、「温めるだけ」「盛り付けるだけ」なら大丈夫なのか、という点です。厚生労働省の資料では、簡易な飲食店営業の例として、既製品を開封して加温・盛り付けする、半製品を揚げる・焼く、米を炊く、飲み物を提供する、といったケースが挙げられています。反対に、手打ち麺や生地づくりのように、提供前の食品を加工・成形する行為は、より本格的な調理にあたり、営業許可を受けた場所で行うべきものと考えられます。 (厚生労働省)
さらに注意したいのが、自家製の調味料や長期間かかる仕込みです。報道では、味噌や醤油、梅干しなどの自家製造、乾物の戻し、塩蔵品の塩抜きなども、基本的には営業または製造の許可が必要と考えるべきだと説明されています。実際、大阪府の案内でも、みそ・しょうゆ製造業、麺類製造業、漬物製造業などは別の許可業種として整理されています。メニューによっては、単なる「飲食店営業」だけでは足りず、別の製造業許可が問題になることもあるわけです。
間借り営業をしたい人が押さえるべきこと
間借り飲食店そのものは、違法な営業形態ではありません。きちんと許可を取り、基準を守って営業すれば問題ありません。ただし、始める前に押さえるべき点ははっきりしています。
まず、仕込み場所をあいまいにしないことです。野菜を切る、肉や魚の下処理をする、タレやスープを作る、生地や麺をこねる――こうした工程をどこで行うのかを明確にし、その場所が許可を受けた施設かを確認する必要があります。キッチンカーに関する大阪市の案内でも、下処理や一次加工、洗浄消毒を行う「基地施設」が必要とされています。これは、営業の実態に即して“仕込みの場所”が重要視されていることの表れです。
次に、管轄の保健所へ事前相談すること。報道でも、食品の種類や自治体によって判断基準が異なるため、不明点があれば必ず保健所に相談するよう呼びかけています。大阪市も、営業許可や食品表示に関する相談は営業所所在地を管轄する保健所へ、と案内しています。SNSの感覚で「このくらい大丈夫」と判断するのが、いちばん危険でしょう。
まとめ
間借り飲食店は、少ない資金で自分の店を持てる魅力的なスタイルです。しかし、食品衛生のルールまで“気軽”にしてよいわけではありません。今回の炎上で見えてきたのは、「間借りかどうか」ではなく、「仕込みや調理を、許可を受けた場所でやっているか」が核心だということ。自宅キッチンでの仕込みは、営業許可や施設基準を満たしていなければ問題になる可能性があります。これから間借り営業を考えるなら、メニューより先に、まず保健所と営業許可の確認から始める。それが、安心して長く続けるための第一歩です。


コメント