2026年2月22日、大阪府庁前を発着点とする第14回大阪マラソン。世界トップクラスのランナーが集うこのレースで、ひとりの日本人選手がその走りよりも先に「見た目」でSNSをざわつかせた。創価大学出身のプロランナー・吉田響(23歳・サンベルクス)だ。
「シール帳みたい」「目立ちすぎやろ」——SNSが騒然

ニュース番組より
スタート前から、テレビ中継やライブ配信を見ていた視聴者の目を釘付けにしたのは吉田の”ビジュアル”だった。顔から上半身、足首にいたるまで、全身に無数の小さな丸いシールが貼り巡らされていたのだ。
SNS上にはたちまち反応があふれた。
> 「にしてもすごい数のシールやったな」
> 「あれほどシール貼ってる人、初めて見てびっくり」
> 「磁気シールあんなにいっぱい貼ってどうしちゃったんだ」
> 「走りもすごいけどシールもすげぇ」
> 「貼り過ぎじゃね笑」
> 「シール帳みたい」
> 「目立ちすぎやろ」
笑いあり、驚きあり——見ている人を一気に引き込む登場だった。
あのシールの正体は「チタンテープ」。100枚以上!
では、あの丸いシールの正体は何だったのか。
レース後、サンベルクス陸上部の田中正直総監督が報道陣にその謎を明かした。
「神経や筋肉に柔軟性を出すもの。100枚以上張っています」
正体は「チタンテープ」(チタニウムテープ)と呼ばれるアイテムだ。チタンの微弱な電気的作用が神経や筋肉に働きかけ、柔軟性やパフォーマンスの向上が期待できるとされる、スポーツ界では一定の支持を持つアイテムである。マラソン選手が数枚貼ることはあっても、顔から足首まで100枚以上というのは前代未聞のレベル。吉田の独自のアプローチ、そして彼を支えるチームの”全力投球”が見えてくる。
レースの展開——大逃げ、独走、そして激闘
見た目のインパクトだけではなかった。吉田のレース内容も視聴者を驚かせるものだった。
8km手前、吉田は突然ペースメーカーの前に飛び出す。10km通過タイムは29分33秒。このペースは日本記録(大迫傑の2時間4分55秒)更新を狙えるスピードだ。20km通過は58分40秒という驚異的なペース。ペースメーカーを置き去りにしての独走状態が続いた。
しかし、このレースには試練が重なった。最初の給水ポイントでボトルを取れず、15km地点でも光の加減でマイボトルを発見できなかった。真夏日のような暑さのなか、水分補給がままならないまま走り続けた吉田。それでも30km超まで先頭を独走し続けた姿は、見る者に鳥肌を立てさせた。
しかし37km地点で限界が訪れる。ハッサン(ジブチ)と平林清澄(ロジスティード)に抜かれ、失速。最終的には2時間9分35秒、34位でゴールした。MGC出場権の獲得にはわずかに届かなかった。
ゴール後、車椅子で救護室へ
ゴールした瞬間、吉田は倒れ込んだ。自力で起き上がることができず、スタッフに水を飲ませてもらいながら、寝たままの状態で車椅子に乗せられ、救護室へ直行した。
田中総監督は涙をこらえながら語った。「脱水症状でかなり苦しい状態でした。最初は会話もできないほどで……」。それでも補水を続けて徐々に回復したという。
識者も絶賛「マラソン界を変えてくれるような走り」
脱水症状を抱えながら2時間9分台でゴールした吉田の潜在能力に、識者たちも目を細めた。
早稲田大学の花田勝彦監督(解説)は「最後は失速しましたけど、ワクワクするような、何か日本のマラソン界を変えてくれるような走りでした。また次のマラソンでみんながワクワクする走りを見せてほしい」と語った。
田中総監督も「脱水症状で2時間10分を切っている。やってきたことに自信はある。スタッフ間で反省して、次に向かっていく」と声を詰まらせながらも、前向きな言葉を残した。
なお、35km地点の通過タイム1時間43分21秒は、完走したことで日本最高記録に認定された。結果は34位だったが、この数字ひとつが吉田の並外れた潜在能力を証明している。
まとめ——シールも走りも、全部が吉田響らしかった
全身に100枚以上のチタンテープを貼り、ペースメーカーを8km地点で早々に置き去りにして独走——。初マラソンにもかかわらず日本記録ペースで突っ込んでいく23歳の姿は、SNSで爆発的に拡散された。
「シール帳みたい」と笑われながらも、そのシールを貼ってでも記録に挑もうとする姿勢は、日本のマラソン界に新しい風を吹き込んでいるのかもしれない。脱水症状でMGC出場権を逃したことは悔しい結果だったが、次のレースでまた吉田響がどんな走りを見せてくれるか——今から待ち遠しくて仕方がない。

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